21世紀生まれ初の日本代表選手として、コロナ禍の困難を乗り越え、イタリア・セリエAで腕を磨いた髙橋藍。日本に帰国後も香取慎吾とのCM共演で話題となり、その人気はアスリートの枠を超えている。そんな彼が「自分へのご褒美」として選び続けるのが、グランドセイコーだ。世界限定モデルから定番顔のスポーツコレクションまで、異なる機構でありながら一貫して日本の匠の技を信頼する──その選択に、世界の舞台で戦う男の趣向が垣間見える。
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年6月1日掲載記事]
コロナ禍を乗り越えてワールドワイドに活躍する髙橋藍選手
身長188㎝という恵まれた体格を持つ髙橋藍(らん)は、21世紀生まれとして初めてバレーボール日本代表に選出されたエリート選手。高校3年時にキャプテンを務め、“春高(全日本バレーボール高等学校選手権大会)”で優勝した際には、自身も最優秀選手賞を受賞し、チームを勝利に導いた輝かしい成績を持つ。
しかし、高橋が日本代表に選ばれた2020年は、コロナ禍の真っ只中だった。東京オリンピックが1年延期となり、その他の国際大会も軒並み延期・中止、アスリートとしては非常に厳しい期間となった。本来であれば順風満帆な選手生活が待っていたはずだけに、モチベーションを保ち続けることは容易ではなかったはずだ。
そんな高橋に転機が訪れたのは、2021年の全日本インカレ終了後である。高橋は、日本体育大学に進学し、兄である高橋塁と共に全日本インカレ(全日本学生選手権)に出場、準優勝を勝ち取った。この活躍が評価され、イタリア・セリエAのパッラヴォーロ・パドヴァに当初1年間の期限付きで入団。翌年も契約を更新することとなった。イタリアバレーボールは世界トップクラスの強豪であるから、多くの刺激を受けたことだろう。続く2023年6月には、同じくセリエAのヴェロ・バレー・モンツァとの契約に至った。
2024年1月、試合中に左足首を負傷し、戦列を離脱したが、多くのファンから寄せられた心配の声に「しっかり治して強くなって戻ってきます」と、心境をつづっている。同年、日本に戻った後はサントリーサンバーズ大阪との契約を発表、現在は大阪・関西万博のスペシャルサポーターにも就任している。
銀座の時計塔前で見せた笑顔。新たなグランドセイコーを手に入れた瞬間
自分へのセルフご褒美をしてきた笑 pic.twitter.com/WVlJmlXKI1
— 髙橋藍(Ran Takahashi) (@Ran_volley0902) May 20, 2025
高橋 藍の公式Xに、銀座4丁目の時計塔前で撮影された姿が投稿された。その左腕には、グランドセイコーが見える。「自分へのセルフご褒美をしてきた笑」とのコメントから、このタイミングで腕時計を新たに購入したことがうかがえる。
本人が購入した時計はRef.SLGH027のようだ。世界限定1200本(うち国内700本限定)の「エボリューション9 コレクション」の新作で、勇壮な岩手山を表現したダイアルを備えている。
岩手山の雄大さを腕元に。限定モデルが魅せる職人技
グランドセイコーの機械式ムーブメント組み立てを担う、岩手県の「グランドセイコースタジオ雫石」。そのランドスケープには、雄大な岩手山がある。その悠久の時の流れにインスピレーションを得て、新たに開発された放射状に広がるダイアルパターンは、鳥瞰で臨む岩手山の尾根筋を表現したものだ。またクリアブルーのカラーリングは、岩手山を包み込む澄み渡る空気や、美しい水を示している。
ケースとブレスレットには、ステンレススチールとして世界最高レベルの耐食性を備えた「エバーブリリアントスチール」を採用。ヘアライン仕上げを主体とした「エボリューション9スタイル」に基づいたデザインコードで仕上げられている。
ムーブメントは毎時3万6000振動のハイビートでありながら、最大巻き上げ時には約80時間のパワーリザーブを備えるCal.9SA5が採用されている。デュアルインパルス脱進機やツインバレルにより、高精度と長時間の駆動時間を実現しながら、独自の水平輪列構造によって薄型化を実現。これによりケースの重心が低く抑えられ、腕なじみが良く、装着感も向上している。

自動巻き(Cal.9SA5)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。エバーブリリアントスチールケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。日常生活用強化防水(10気圧)。世界限定1200本(うち国内700本)。146万3000円(税込み)。
以前も選んだのはグランドセイコー。スプリングドライブの滑らかな秒針が印象的
本コーナーでは、およそ1年前にも髙橋藍選手を取り上げているが、その際に彼が着けていたのは、同じくグランドセイコーのスポーツコレクション「SBGE201 9R スプリングドライブ」だった。機械式時計に用いられる主ゼンマイを動力源としながら、クォーツと同等の高精度を実現した第三の機構「スプリングドライブ」に、GMT表示機能を備えたモデルである。
この時計の見どころは、滑らかな秒針の動きである。ブラックダイアルの上を滑るように動き、印象を特別なものにしているのだ。回転ベゼルにもサファイアガラスが用いられ、奥行き感と透明感を演出。リュウズは4時位置に配され、手首の動きを妨げない実用性と快適な装着感を具現している。

スプリングドライブ(Cal.9R66)。30石。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径44mm、厚さ14.7mm)。20気圧防水。
著名なアスリートがグランドセイコーを選ぶのは、グランドセイコーの真摯なものづくりへの姿勢に共感する点もあると思うが、日本人として国内有数の高級腕時計ブランドの素晴らしさを伝えたいという気持ちもあるのではないだろうか。大谷翔平がアンバサダーを務めていることは時計愛好家ならずとも知られているが、国際的に活躍し、人気がある髙橋藍にも、チームメイトやイタリアの友人たちからの視線が集まったことだろう。
今回、自分へのご褒美として、再びグランドセイコーを選んだ髙橋藍。異なるコレクション、異なる機構でありながら、どちらも日本の匠の技が結集された逸品だ。世界の舞台で戦い続けてきた彼だからこそ、真のクオリティを見抜く眼を持っているのだろう。バレーコートで見せる華麗なプレーと同様に、腕元にも一切の妥協を許さない——それが髙橋藍選手の美学と言えそうだ。